結論: Claude Codeは手元の端末で動きますが、やり取りの内容はネットワーク経由で送信されます。「ローカルで動くから顧問先データは外に出ない」という理解のまま業務に入れると、前提を取り違えたまま運用することになります。確認しておきたいのは、契約プランごとの学習利用の扱いと、端末に平文で残る記録の二点です。
「ローカルで動く」が何を指しているのか
個人の税理士事務所がAIコーディング環境で業務を回す事例が話題になったこともあり、Claude Codeのような手元で動くAIを業務に入れられないか、という関心が士業の方の間でも出てきています。
このとき「クラウドのチャットAIと違って手元で動くから、顧問先データを外に出さずに済む」と理解されている場面に出会うことがあります。ここは前提の確認が要る部分です。
Anthropicの公式ドキュメントは、この点を次のように書いています1。
Claude Code runs locally. To interact with the LLM, Claude Code sends data over the network. This data includes all user prompts and model outputs, encrypted in transit via TLS 1.2+.
(Claude Codeはローカルで動作します。LLMとやり取りするため、Claude Codeはネットワーク経由でデータを送信します。このデータにはすべてのユーザープロンプトとモデル出力が含まれ、TLS 1.2以上で暗号化されて送信されます。)
つまり「ローカルで動く」はプログラムの実行場所の話であって、データの送信先の話ではありません。手元のファイルを読ませれば、その内容はプロンプトの一部として送信されます。顧問先の決算データを読ませれば、その中身が送信対象になります。
これはクラウドのチャットAIに顧問先データを貼り付けるのと、データが外部に渡るという点では同じ構図です。個人情報保護委員会も、生成AIサービスへの個人情報の入力について、利用目的の範囲内であることを確認するよう注意喚起しています2。
違いは「どこに送られ、そこでどう扱われるか」にあります。そこが次の論点です。
契約プランで学習利用の扱いが変わる
同じClaude Codeでも、どのプランで使うかによって、送信されたデータが学習に使われるかどうかが変わります。公式ドキュメントの記載は次のとおりです1。
個人向けプラン(Free / Pro / Max)の場合:
We will train new models using data from Free, Pro, and Max accounts when this setting is on (including when you use Claude Code from these accounts).
(この設定がオンのとき、Free・Pro・Maxアカウントのデータを使って新しいモデルを学習します。これらのアカウントからClaude Codeを使用した場合も含みます。)
商用プラン(Team / Enterprise / API)の場合:
Anthropic does not train generative models using code or prompts sent to Claude Code under commercial terms, unless the customer has chosen to provide their data to us for model improvement
(商用規約のもとでClaude Codeに送信されたコードやプロンプトを使って、Anthropicが生成モデルを学習することはありません。顧客がモデル改善のためにデータを提供する選択をした場合を除きます。)
事務所としてここが効いてくるのは、導入の入口で個人向けプランを使い始めることが多いという点です。まず所長が個人アカウントで試し、便利だったので業務にも使う、という順序は自然な流れです。ただしその個人アカウントの設定次第では、送信されたデータが学習の対象になり得ます。
保存期間もプランで変わります1。
| プラン | 学習利用 | 保存期間 |
|---|---|---|
| Free / Pro / Max(設定オン) | 対象になり得る | 5年 |
| Free / Pro / Max(設定オフ) | 対象外 | 30日 |
| Team / Enterprise / API | 対象外 | 30日 |
| Enterprise + ゼロデータ保持 | 対象外 | サーバー側に保持しない |
ゼロデータ保持については、公式ドキュメントに「標準のEnterpriseプランには含まれず、適格性の確認を経て組織ごとに有効化される」と明記されています1。契約すれば自動的に付くものではない、という点は押さえておく箇所です。
端末に平文で残る記録
もう一つ、事務所側で見ておきたいのが手元の端末に残る記録です。公式ドキュメントは次のように書いています1。
Claude Code clients store session transcripts locally in plaintext under
~/.claude/projects/for 30 days by default to enable session resumption.(Claude Codeクライアントは、セッションの再開のために、セッションの記録を既定で30日間、
~/.claude/projects/配下に平文でローカル保存します。)
平文で、30日間です。顧問先の情報を扱ったやり取りは、その記録として端末のディスクに残ります。
守秘義務の観点で見ると、これは「AIに送ったかどうか」とは別の論点になります。端末が盗難に遭った場合、退職した職員の端末が回収されていない場合、共有端末で複数人が使っている場合——いずれも、その平文の記録に誰が到達できるかという話です。
保存期間は cleanupPeriodDays という設定で変更できると記載されています1。事務所として決めておくとすれば、次のあたりです。
- 端末のディスク暗号化が有効になっているか(macOSのFileVault、WindowsのBitLocker等)
- 保存期間を業務に合わせて短くするか
- 顧問先情報を扱った端末を、退職・入替のときにどう処理するか
何ができるツールなのかを、業務の言葉に置き直す
ここまでは確認事項でしたが、では何に使えるのかも整理しておきます。
Claude Codeの権限モデルについて、公式ドキュメントは次のように書いています3。
Claude Code uses strict read-only permissions by default. When additional actions are needed (editing files, running tests, executing commands), Claude Code requests explicit permission.
(Claude Codeは既定で厳格な読み取り専用の権限で動作します。ファイルの編集、テストの実行、コマンドの実行といった追加の操作が必要な場合、Claude Codeは明示的な許可を求めます。)
また、書き込みできる範囲にも境界があります3。
Working directory boundary: Claude Code can only write to the folder where it was started and its subfolders
(作業ディレクトリの境界: Claude Codeは起動したフォルダとそのサブフォルダにしか書き込めません。)
この二つを業務の言葉に置き直すと、「指定したフォルダの中のファイルを、許可を出した操作だけ実行する」ということになります。チャットに貼り付けて答えをもらう使い方とは、扱える対象が違います。手元のフォルダにあるファイル群そのものを対象にできる、という点が差です。
そこから考えると、向いているのは判断そのものではなく、確認作業の側です。
- 提出書類のフォルダを見て、揃っていないものを一覧にする
- ファイル名の付け方が揃っていないものを洗い出す
- 複数の表を突き合わせて、数字が合わない箇所を挙げる
いずれも、最終的な判断は人が下すもので、AIが出すのは「確認すべき箇所の候補」です。公式ドキュメントも「Claude Code only has the permissions you grant it. You’re responsible for reviewing proposed code and commands for safety before approval.(Claude Codeはあなたが与えた権限しか持ちません。承認の前に、提案された内容の安全性を確認する責任は利用者にあります)」と明記しています3。
導入前に決めておきたい三点
まとめると、業務に入れる前に事務所として決めておきたいのは次の三点です。
- どのプランで使うか — 個人向けプランのまま顧問先情報を扱うと、学習利用と5年保存の対象になり得ます。業務利用なら商用プランを前提に考える箇所です
- 端末側の管理 — 平文の記録が30日残ります。ディスク暗号化と、端末の入替・退職時の手順を先に決めておく箇所です
- 何に使わないかを先に決める — 権限を与える範囲は利用者が決めます。顧問先フォルダ全体を対象にするのか、作業用のコピーだけにするのかで、事故が起きたときの範囲が変わります
Claude Codeに限らず、AIを業務に入れる場面では「便利かどうか」より先に「どこまで渡すか」を決めておくと、後から契約や運用を作り直す手戻りを減らしやすくなります。
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自事務所の状況に合わせて確認したい場合
どのプランを選ぶか、どこまでを対象にするかは、事務所の規模と顧問先の構成によって変わります。現在お使いのツールと業務の流れを踏まえて、確認しておく箇所の整理からご一緒できます。
Footnotes
-
Anthropic「Data usage」Claude Codeドキュメント https://code.claude.com/docs/en/data-usage(2026-08-12確認) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
-
個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」2023年6月2日 https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/ ↩
-
Anthropic「Security」Claude Codeドキュメント https://code.claude.com/docs/en/security(2026-08-12確認) ↩ ↩2 ↩3